【2021年版】インド市場はアフターコロナで成長する?人口やGDP、今後の課題について徹底調査してみた

インド市場は、近年の人口の増加率やGDPの水準から、急成長していくと推測されています。

今回の記事では、コロナ禍でのインド市場やECの拡大などに焦点を当て、今後インド市場がどのように変化していくのかを解説していきます。

この記事を読めば、インド市場のコロナ禍での変化や、アフターコロナのインドのEC市場がわかります!

コロナ禍でのインド市場を調査!

インドの人口は?

インドの人口増加率は年々1.6%と、どの国よりも高い水準となっています。

現在インドの人口は世界第二位ですが、第一位の中国の人口増加率は0.9%なので、このままいくと、 2027年にはインドの人口が中国の人口を抜かすと国際連合が予測しています。

図:インドと中国の生産年齢人口

データ出典:独立行政法人経済産業研究所

GDPの変移について

2021年度の第一四半期の実質GDP成長率は、前年同期比の20.1%とかなり高い水準でした。成長率を需要項目別にみると、個人消費を示す民間消費支出が19.3%、投資活動を示す総固定資本形成が55.3%となっています。

コロナの第二波で一部の企業活動が制限されていましたが、前年同期のロックダウンの措置と比べると、大幅なプラスとなりました。

大幅なプラスとなった要因としては、前年同期の歴史的な経済の落ち込みを見せたことによる反動の側面が大きいとされています。そして、コロナ禍でも企業活動の制限を限定的にとどめる政策への転換が経済の下支えをしました。

では、2020年度に実行されたインド全土のロックダウンでは、どんな経済的影響があったのでしょうか?

ロックダウンによる労働市場の悪化

2020年3月25日、コロナ感染拡大防止策として、インド全土でロックダウンが実行されました。

モーディー首相はロックダウンについて 「感染の連鎖を断ち切るためには家に留まることが重要である」と繰り返し強調する一方で、封鎖措置の内容や経済対策については一切言及しませんでした。

インドのロックダウンは、他国と比べて非常に厳しく、公的機関、民間企業、店舗、工場、学校などは原則として全て閉鎖されました。

また、封鎖措置の違反者に対しては、警察による過剰ともいえる厳しい取り締まりが行われ、さらに、 違反すると最長2年の禁固刑と多額の罰金が科せられるとのこと。

そのためロックダウン期間中に労働市場は悪化し、2020年3月の失業率は8.74%でした。さらに状況は悪化し、同年4月には23.52%、5月には27.11%まで上昇してしまう状況です。

2019〜2020年の就業者数の月平均は4億400万人でしたが、2020年3月には3億9600万人まで減少し、さらに2020年4月には2億8200万人まで減少したと推測されています。

自動車市場の問題

インドの人口増加に伴い、自動車の販売台数が伸びていましたが、コロナの感染拡大により、10年近く伸びていた販売台数が2020年に初めて落ち込みました。

インドは10年前に、13億人の人口を抱える市場が成熟し、2020年までにはアメリカと中国に次ぐ世界第3位の自動車市場に成長するという予測がされていました。しかし、数年前に大型乗用車とSUVの課税の強化が行われたり、コロナによって景気低迷したりと、あまり販売台数が伸びず、2020年では世界第5位という結果となっています。

インド市場のアフターコロナはITが加速?

デジタルビジネスの拡大

コロナの感染拡大の影響により『デジタルビジネス』の活用が一層加速しました。IT大国のインドでは多くの企業がデジタルビジネスに参入しています。

小売業や飲食業にもデジタルビジネスの波が来ており、 ECやデリバリー市場の拡大が顕著になっています。

2021年7月には、フードデリバリー大手の「ゾマト」や同じく業界大手の「スウィッギー」が、多額の資金調達を成し遂げました。

一方、インドの小売業では、 従来型店舗のEC化や、店舗業務のデジタル化、非接触化が急速に進みました。また、多くの飲食店では、紙のメニューの代わりにQRコードが設置されていて、スマートフォンでメニュー閲覧から注文・決済まで完結する仕組みが取り入れられています。

デジタル労働の加速

コロナ禍による生活の変化によって、小売や飲食、物流、ハウスサービス、教育などのさまざまな領域でITサービスによる『デジタル労働』が進みました

ITプラットフォームを活用して、単発の仕事を請け負う労働者を「ギグワーカー」と呼び、これらのサービスによって成り立つ経済を「ギグエコノミー」と呼びます。

ギグジョブ(ITプラットフォームを活用した単発の仕事)は、最大9,000万人の雇用を創出する可能性があり、スタートアップの新規参入や投資が多いことから、今後さらに規模が大きくなっていくと推測されています。

インドの都市部では、地方からの出稼ぎや日雇い労働者が多いことと、ギグジョブの多くが、世襲的な職業選択に捉われないことがギグエコノミーの発達をさせた要因になっていると考えられています。

成長し続けているインド株に注目!

コロナショックにより一時株価急落

2020年3月にインド株は、アメリカや日本に比べ大きく株価が下落しました。「MSCIインド」は、2019年12月末と比較して2020年3月末にはマイナス34.86%という結果でした。アメリカ、中国、日本では10%台の落ち込みだったことに比べると、インド株は大きな下落だったことがわかります。

MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が算出・公表する指数の総称。先進国、新興国、フロンティア市場(経済発展の初期段階にある途上国)合わせて約70カ国・地域の株式市場をカバーしている。代表的な指数として、先進国と新興国の大型株、中型株から構成されるMSCI All Country World Index(ACWI)、先進国の大型株と中型株から構成されるMSCI World Indexなどがある。多くの機関投資家や投資信託のベンチマークとして採用されている。

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/e/msci.html

しかし、インド株の落ち込みが大きかった分、その後の回復にも勢いがありました。

史上最高値を更新し続けるインド株に注目!

インド株上昇の要因として、 個人投資家に人気がある小型株の上昇が挙げられます。

実際に、2020年度の株式売買高の投資部門別比率では、個人投資家が前年度比6ポイント増の45%になっていることから、個人投資家の市場参加が進展しているといえます。

各ファンドの見通しでは、中長期的な見通しは明るいという見解です。ただし、コロナ感染の再発や、インフレが進まないかなど注意するべきポイントがあり、株価が急下落する可能性もあります。

今後のインド市場の課題点

人口の増加と雇用機会の不足

人口の増加が世界の中でトップレベルのインドですが、課題もあります。

第一に、増え続ける人口に対して、雇用機会が圧倒的に足りないことです。毎年、約1,500万人が職を求めて新規参入しますが、全員に安定した職を与えられない状況にあります。

土地収用法や労働関連法制に関わる改革を進めなければ、新たな雇用を創出することは難しいということです。

経済成長と環境問題の両立

経済成長に伴い、大気汚染の問題が深刻化しつつあり、インドの首都ニューデリーでは、世界で最も大気汚染が深刻な都市のひとつとなっています。

経済成長を重視しつつ、再生可能エネルギー比率の上昇、エネルギー発電、電気自動車の普及、排ガス規制の強化など、対策を打っていく必要があります。

関税の項目の多さ

外資企業に対する関税項目がインドはかなり多く、日本企業からすると、敬遠してしまうレベルとのことです。ほとんどの項目が18%ですが、特殊な材料や、農作物には細かく税率が設定されています。 

また、米中貿易戦争の深刻化などを背景にアメリカは、中国から他のアジア新興国へ移転させる動きがありますが、インドが有力候補になるためには、アメリカとの貿易摩擦を回避することが重要になります。

コロナの影響でインド市場のEC需要が拡大している?

コロナ禍で一気にEC市場が拡大!

インド全土でのロックダウンで、買い物が制限された際に、生活必需品を自宅まで運んでくれるECサービスが、インドの国民に大変便利な存在となりました。

近年の急成長の背景には、インターネットの基盤が国内で爆発的に普及したこともあります。2019年時点では、 インドのネットユーザー数は、6億6,531万人に上っています。コロナ後の現在において、ユーザーがさらに増えていることは間違いないです。

そして、インドのEC市場の成長率は、今や世界のトップとなっていて、世界基準の9.6%をはるかに上回る、19.9%もの年間成長をしています。圧倒的な人口の増加とインターネットの普及によって、今後もEC市場はますます伸びていくことが予想されていて、EC市場で一番注目を集める国になるかもしれません。

ロックダウンによる食料品のEC市場の向上

インド全土のロックダウンによって、インドでも外出や店舗での人との接触を避けようとする消費心理が働き、オンラインで購入することを好む人々が増えました。

2020年のインドの祭事期だった、10月15日〜11月15日のEC市場の売り上げは83億ドルに上り、2019年実績の50億ドルと比べて65%増加しました。

しかし元々は、食料品は他の物品に比べて「実際に自分の目で見て購入したい」という意識がインドの消費者に根付いていて、オンライン購入を敬遠する人々が多かったのです。

コロナ禍で、家から出られない期間が長かったため、オンラインで食料品を購入せざるをえない人々が増えました。したがって、一気に食料品をオンラインで購入することへのハードルが下がったのです。

インドのEC市場はモバイル端末に特化している?

ロックダウン明けにECの需要増加のおかげで、2020年のスマートフォンの売り上げ台数は1.5億台を超える出荷となりました。それに伴い、インドのEC市場はモバイル端末に特化するようになります。

インターネット販売での強力なプロモーションやEラーニング、在宅勤務などによる新しい使い方が普及し、コロナ禍でもスマートフォン市場を牽引しました。

まとめ

インド市場はコロナ禍において、ロックダウン中に一時景気が低迷したものの、その後は世界で一番の経済成長を遂げています。

人口増加による失業率や環境問題など、様々な問題が多く取り上げられるインドですが、ITの加速やEC市場により、インターネット上でのプラットフォームが確立してきたことで、デジタル労働が増え、雇用機会も着実に増えてきています。

またコロナ感染拡大により、インドの人々の生活様式が大きく変化したことによって、今後、インドのEC市場はアフターコロナにおいてさらに生活の中に浸透していくと予想されています。