インドにビジネス参入を考える人に向け「インド関税の知識」をお伝えします。海外に支店を持ったり、越境ECなど、ビジネスでインド進出を考えている人が知っておかなければいけない知識です。
インドは5,000年もの長い歴史がある国です。しかし近年、経済立て直しをするために多くの政策が打ち出されました。関税も例外なく影響を受け、2019年以前と比較すると多くの項目が存在します。
関税に関する知識は「知らなかった」では済まされません。本記事を参考にしていただき、あなたのビジネスがよりよいものになるよう心がけていただければと思います。
インド関税6つ!知らなければビジネスできない基礎知識
インドの関税は5つの項目にわかれています。どんなビジネスで参入するかにより、関税が異なりますので、必ず知っておきましょう。関税5つは以下のものがあります。
・基本関税
・社会福祉課徴金
・農業インフラ・開発目的税
・統合物品・サービス税
・GST補償税
・その他
それぞれについて詳しく解説していきます。
基本関税
輸入物品に応じて原則0〜10%が課される税です。例外的にこの範囲を超える高関税が課される場合もあります。
基本関税額は以下の計算式で求められます。
基本関税率×評価額(Assessable Value) |
また、評価額(Assessable Value)は以下のように定められています。
評価額=FOB価格+a.輸送費+b.保険料+c.荷揚げ費用 |
「FOB価格」「a.輸送費」「b.保険料」「c.荷揚げ費用」について、簡単に説明します。
FOB価格 | FOB価格とは、販売価格に梱包費用や輸出国までの輸送費用、輸出国側通関費用などを含めた価格。 輸入者と輸出者により負担する価格が異なる。 輸出者は輸出港で船に積載するためのリスクや、輸出検査費などを負担。しかし、積載後の費用は輸入車が負担するという取り決め価格のこと。 |
a.輸送費 | 輸入地までの輸入品目の輸送費のこと。当該費用が算出できない場合、FOB価格の20%と定められている。 |
b.保険料 | 当該品目にかけた保険料。保険料が算出できない場合、FOB価格の1.125%と定められている。 |
c.荷揚げ費用 | 輸入品目に関する荷役費または手数料のこと。当該費用が算出できない場合、以下の計算式に当てはめて計算する。 (FOB価格+輸送費+保険料)×1% |
基本関税は、品目により税額が異なるため自分のビジネスに当てはめて正確に計算する必要があります。関税率などの調べ方は、後ほどお伝えします。
社会福祉課徴金
介護などの福祉関連のビジネスで参入する場合に必要な関税です。以下のように定められています。
基本関税に10%、特定の物品に対しては3%の関税が課せられる。
農業インフラ・開発目的税
1975年関税率法第一附則に規定された物品に対し、基本関税率を超えない税率で課されるものです。
「農業インフラ・開発目的税」は、英語表記「Agriculture Infrastructure and Development Cess」の頭文字から「AIDC」と言われることがあります。AIDCは、様々な項目における特定商品に対し2.5〜100%が適用され、基本関税率を超えない税率で課されます。
自由貿易協定などにより関税免除を利用された場合、AIDCも免除対象となります。しかし、特定の場合を除き、社会福祉町課金が課されます。
統合物品・サービス税
基本関税と社会福祉課徴金に加え、2017年IGST法第5条に基づいて課せられる税です。
英語表記「Integrated Goods and Services Tax」の頭文字からIGSTと呼ばれ、輸入品目により0〜28%(最大税率40%)です。税率は輸入品目により異なるため、注意が必要です。
しかし、2017年6月28日付通知により以下のものはIGSTから免除されるよう規定されました。
・豆類
・野菜
・食肉
・手織物
・新聞
・書籍
他にも一部例外的に免税対象になる場合もあります。
物品・サービス(GST)補償税
物品・サービス補償税は、GST(Goods Service Tax)と呼ばれ、嗜好品に対して課される税です。2017年GST補償税法第8条および関連別表により、以下のものに規定されています。
・タバコ
・炭酸水
・高級車など
これらの品目は、以下の3点に留意する必要があります。
・州内の取り引きか
・州をまたぐ取引か
・国外取引か
州内の取引の場合、SGST(State GST:州内で適応されるGST)とCGST(Central GST:国内に適応されるGST)が適用されます。州をまたぐ国外取り引きの場合、IGST(Integrated GST)が適用されます。
しかし、以下のものはGST対象外とされます。
・原油
・高速ディーゼル
・ガソリン
・天然ガス
・航空タービン燃料
・人が消費するアルコール
これらのものは、GSTに替えて旧法の相殺関税(CVD)、追加関税(ADC)・特別追加関税(SAD)が課税されることになっています。
インドの関税率を調べる方法
インドの関税率を調べるには以下の3つの方法があります。
・World Tariff
・RULES OF ORIGIN TACILITATOR
・インドの税関や国際空港などで調べる
いずれの方法で調べられますが、税関や国際空港などで調べるのは時間と労力を必要とします。オンラインを活用できるなら「World Tariff」もしくは「RULES OF ORIGIN TACILITATOR」がおすすめです。簡単に説明します。
World Tariff
FedEx社が運営する関税データーベースです。有料ツールですが、JETRO(ジェトロ)というサイトからユーザー登録をすれば無料で利用できます。
世界175ヵ国の関税率などが収録されているため、原産国別に最低税率が表示される仕組みになっています。使用方法はHS番号をクリックするだけなので、誰でも簡単に利用できます。
RULES OF ORIGIN TACILITATOR
WTO(世界貿易機関)、WCO(世界関税機構)、ITC(ITコーディネータ)が合同開発したツールです。データベースには190カ国以上の関税情報が記載されており、誰でも利用できる無料ツールです。
しかし、日本語表記はないので、英語が苦手な方はグーグルで翻訳された日本語を読むことになります。難しい言葉が並ぶ場合、理解に苦しむこともあるため英語が読める方におすすめです。
https://findrulesoforigin.org/
HSコードを税関などで調べる
HSコードとは、世界共通の品目番号のことです。世界200以上の国と地域が使用しているコードで、6桁の番号が設定されています。日本語では「輸出入統計品目番号」「関税番号」「税番」と呼ばれています。
インドの税関サイトや日本税関協会「Web輸出統計品目表」で調べられます。
インドと日本に関連する税
一般的な関税とは別に、日本とインドの関係により特例的に適用されるものがあります。
・対日輸入適用税率
・特恵関税制度
・関税以外の諸税
それぞれ詳しく説明します。
対日輸入適用税率
インドへの輸入品に対して、品目により日印包括的経済連携協定(CEPA)において条件を満たせば譲許税率が適用されます。
条件とは「特定原産地証明書の提出」のことです。
譲許税率は、財務省中央物品関税局2011年7月29日付通達No.69/2011に記載された税率です。
特恵関税制度
特恵関税制度とは、以下の目的により税率が適用される制度のことです。
・輸出所得の増大
・工業化、経済発展の促進
発展途上国から輸入される一定の農水産品、鉱工業産品に対して一般の関税率より低い税率(特恵税率)が適用される制度です。
対象品目
特恵関税制度の対象品目は以下のとおりです。
・石油、毛皮など一部の例外品目を除き、原則として全ての品目に特恵関税を供与
特恵税率
個々の品目ごとに一般の関税率より低い税率が設定されます。
・原則として無税
・一部の品目は一般税率の20%、40%、60%、80%
特恵停止方法
国内産業に損害を与えるなどの場合に、政令で特恵適用を停止されることがあります。これはエスケープ・クローズ方式と呼ばれ、他の産業を守る意図が込められています。
関税以外の諸税
アンチ・ダンピング税、セーフガード税が課せられる品目があります。
輸出国における国内向け販売価格と、輸出向け販売価格の差(ダイピング・マージン)により課税額が確定されるものです。
アンチ・ダイピングは、1975年関税率法9A、9AA、9B項に基づいています。
セーフガードは、同法8B項に基づいています。
まとめ
関税に関する内容は、複雑に感じるかもしれません。しかし、ビジネスを展開させるときに「関税のこと知らなかった」では話になりません。それどころか、ビジネス計画が狂う原因になり最悪の場合には継続困難になるでしょう。
いえ、そもそも関税のことを知らなければビジネスをスタートすることすらできなかったかもしれません。本記事がインドに参入しようとする皆様のお役に立てれば幸いです。